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左京、太政大臣に相談に行く
御徒町の一族は全員女性で、しかも類い稀なる美人ばかりです。
その一族の一人である樹里と夫婦になれた不甲斐ない男の左京は、長子である護の訪問を受けていました。
「なるほど、それは難儀な話だな」
左京は匂の宮の境遇を知り、溜息を吐きました。
「はい。匂の宮様は瑠里様に相応しいお方です。決して、生まれで蔑ろにされるようなお方ではありませぬ」
護が言いました。しかし左京は、
「匂の宮殿の器量と瑠里に相応しいかとは同じではないぞ」
その言葉に護はハッとしました。
(まずかったな。この話は父上には禁句であった)
後悔する護です。
「私から太政大臣様に話をしてみよう。お父上の言葉ならば、内府殿も聞くだろう」
「よろしくお願い致します」
護は頭を下げ、退室しました。
左京は溜まっていた書き物を仕上げると、太政大臣の部屋へ行きました。
「如何した、左府殿?」
何も知らない太政大臣は笑顔で迎えました。