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左京、気を揉む
御徒町の樹里は都で一番の美人でしたが、今は娘の瑠里や冴里も負けないくらい美しくなっています。
特に長女の瑠里は、内大臣の馨の嫡男である匂の宮とたびたび表で会っています。
そして、歌も送り合う仲に発展していました。
そんな瑠里の行動を見聞きし、父親である左京は気を揉んでいました。
(以前、内府殿を一喝してしまった手前、どうにもバツが悪い)
左京は、瑠里の事で、馨につけ込まれはしないかと不安になっていました。
(すっかり護の事は言わなくなったが、これでまた何か言い出しそうで困る)
長子である護の養子の話は完全に立ち消えになったのですが、瑠里と匂の宮の事を絡めてまた蒸す返すような気がしてしまう左京です。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。
「そうなんですか」
三女の乃里も笑顔全開です。
「乃里は父を困らせないでくれよ」
左京は乃里を抱き上げて告げました。
「そうなんですか」
乃里はそれでも笑顔全開で応じました。