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そして月日は流れる
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄でした。
その樹里も年を重ねましたが、全くその美貌は衰えておりません。
その上、娘の瑠里と冴里が美しく成長し、元々樹里によく似ていた容姿が更に似て来ました。
「瑠里様と夫婦になりたい」
そう思う殿上人達はたくさんいました。
「冴里様も捨て難い」
そんな風に思う者達もいました。そのせいで父親の左京は気が気ではありません。
実は、瑠里と冴里に男達が群がる理由の一つは、自分が左大臣だという事に気づいていない馬鹿者です。
「うるさい!」
率直な意見を述べただけの地の文に切れる左京です。
「そうなんですか」
それにも関わらず、樹里は笑顔全開です。
侍女の茜はすでに老化が進み、娘の紅が侍女になっていました。
「失礼な!」
まだ現役バリバリの茜は誹謗中傷を繰り返す地の文に切れました。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。そして左京は引きつり全開です。