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馨の執念
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
左京と護の心配している通り、馨はまだ諦めた訳ではありませんでした。
(主だった方々にお力添えいただき、左府様に首を縦に振らせてやる)
昔から根が陰湿な馨はニヤリとしました。さすが元馬です。
「前世の話をするな!」
正直に分析をしたはずの地の文に切れる馨です。やはり陰湿です。
「更にうるさい!」
馨は続けざまに切れました。
(まずは父上だ。父上も護を可愛がっていた。我が五反田家の養子となれば、さぞやお喜びになろう)
馨は嬉々として邸を出ました。
(何をお考えなのだろう?)
正室の美子は夫の只ならぬ気配に気づき、案じました。
(どうするかにゃん。左京は困らせたいけど、樹里様は困らせたくないにゃん)
元猫又の吏津玖はアホな事で悩んでいました。やはり小者です。
「もう小者ネタはやめて欲しいにゃん!」
しつこい地の文に切れる吏津玖です。




