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左京、護と話す
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
左京は、瑠里と冴里が護に夢中なのを心配し、護を自分の部屋に呼びつけました。
「お呼びですか?」
神妙な面持ちで護が入って来ました。左京は床から起き上がり、
「護、瑠里や冴里とは実のきょうだいなのだぞ。何を考えておるのだ?」
護はギクッとしました。
(私はまた瑠里様に惹かれている……)
護があまりにも深刻な顔になったので、左京は苦笑いをして、
「あまり深く考えずともよい。其方がわかっておれば、それで構わぬ」
「申し訳ありませぬ、父上」
護は床に額を擦り付けるようにして詫びました。
「して、今日は如何した?」
左京は微笑んで尋ねました。護は顔を上げて、
「実は、内府様に養子の話をされました」
「何!?」
左京の顔が途端に険しくなったので、護は、
「もちろん、お断わり致しました。私は杉下家の長子なので養子にはなれませぬと」
「そうか」
左京はホッとしました。