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護、デレデレする
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
護は歓待されて喜んでいました。
とりわけ、かつては義理の妹と思って思いを寄せていた瑠里にたくさん話しかけられ、天にも昇る心持ちです。
「ねえ、義兄様ァ」
そんな護の態度に気づいて冴里が嫉妬したのか、瑠里との間に割って入りました。
「どうしましたか、冴里殿?」
護は優しい笑顔で冴里に尋ねました。すると今度はそれを見た瑠里が、
「義兄上様は今は私とお話しているのですよ」
冴里を押しのけようとしました。
「姉様ばかり、ずるい」
冴里は口を尖らせて、瑠里に抵抗しました。
「お二人共、仲良くしましょう」
護はデレデレしながら、仲裁しました。
(ああいうところは左京にそっくりにゃん)
その様子をこっそり柱の陰から見ていた小者は思いました。
「小者じゃないにゃん!」
またしてもボケをぶっ込んで来る地の文に切れる元猫又の吏津玖です。




