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左京、瑠里と和解する
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
瑠里は緊張している左京を見て、クスッと笑いました。
「な、何だ?」
左京はビクッとして瑠里を見ました。瑠里はそんな父を見て、哀れになりました。
「私は別に父上に腹を立ててはおりませぬ」
瑠里は左京にすり寄り、顔を覗き込んで告げました。
「え?」
近過ぎる娘の顔に動揺する左京です。
「匂の宮様とは、別にそのような関わりではありませぬ」
瑠里は真顔になって言いました。
「そ、そうであるか」
左京は顔を引きつらせて応じました。
(まさか、未だに護を好いておるのか?)
左京はギクッとしました。
長い間、義理の兄だと思い、淡い恋心を抱いていた瑠里を知っているので、その方が困ると思う左京です。
「私はまだ子供です。殿方は、遊び相手ですよ」
瑠里の屈託のない笑顔にホッとする左京ですが、不安は拭い切れません。
(勘繰るのはよくない)
左京は妄想を振り払いました。




