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宮川の少将、ようやく左京に詫びる
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
宮川の少将は左京の部屋に通されました。
「お久しぶりです」
そこには樹里の他、側室の龍子、麻耶、髪長姫、次女の冴里、侍女の茜もいました。
左京はもうすぐお迎えが来るようです。
「断じて違う!」
臥せっているのに元気な左京が地の文に切れました。
「如何した、少将殿?」
左京は樹里に手を貸してもらい、起き上がりました。
「その、宮中では大変失礼を致しました故、そのお詫びに参りました」
少将は恐縮して言いました。すると左京は微笑んで、
「埒もない事を。其方はいろいろと気にし過ぎですぞ」
「勿体ないお言葉です」
少将は土下座して応じました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。少将は顔を上げて、
「ようやく夫婦になってくれる女子を見つけました。これで私も真っ当に生きられそうです」
涙ぐんで言いました。