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茜危うし!
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
吏津玖の呪符によって、意のままに操られている茜はとうとう衣を脱ぎ始めました。
「むほほお!」
興奮のあまり、鼻息を荒くして前のめりになる吏津玖です。
(遂にこの時が来たにゃん! 今まで、さんざんいじめられていた仕返しをする時が来たにゃん!)
吏津玖は涙ぐんで喜びました。茜にされて来た仕打ちが、走馬灯のように頭の中を過ります。
そして、茜は薄衣一枚になりました。もうこれ以上はいろいろと限界だと思う地の文です。
「うおお!」
吏津玖は雄叫びを上げ、鼻血を垂らしました。
「早くそれも脱ぐにゃん、 茜しゃん!」
待ち切れなくなった吏津玖は自分で脱がそうとして掴みかかりましたが、茜の姿がスウッと透けました。
「はにゃ?」
吏津玖はポカンとして振り返りました。
『お怨み申し上げます』
かつて猫又の時に食った人間の怨霊が登場したのでした。




