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慶一郎、まどかを見舞う
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
慶一郎は正室のまゆ子とずっと一緒にいると身体の具合が悪くなりそうなので、里帰りしているまどかのところに向かいました。
里帰りとは言っても、母親の梓は再婚しているので、向かった先は朽木家です。
(あまり行きたくないのだが)
慶一郎は梓の再婚相手の孝太郎が苦手です。
しかし、それにも増して愛しいまどかとその娘にはどうしても会いたかったので、何とか気を取り直します。
「ようこそいらっしゃいました」
孝太郎と梓が出迎えてくれました。
「私もおばば様になってしまいました」
梓が恨めしそうに慶一郎に言いました。ギクッとする慶一郎です。
「まどか様がお待ちですよ」
孝太郎は上機嫌に慶一郎を案内します。
「血は繋がっておりませんが、やはり孫のような気がして、可愛いですよ」
孝太郎が言いました。
「そうなんですか」
慶一郎は樹里の口癖で応じました。