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左京、邸に帰る
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
左京は邸に帰りました。
「父上、お帰りなさいませ」
「父様、お帰りなさいませ」
長女の瑠里と次女の冴里が出迎えました。
「只今戻りました」
娘の出迎えに鼻の下を伸ばして応じるバカ親です。
「うるさい!」
心ない事を言うのが生きがいの地の文に切れる左京です。
「お帰りなさいませ」
樹里が笑顔全開で言いました。
「只今帰りました」
更に鼻の下を伸ばして言う左京です。
「お帰りなさいませ」
龍子と麻耶も出迎えました。
三人の妊婦が並ぶと壮観だと思う地の文です。
現実に引き戻された左京は卒倒しそうです。
(いくら左大臣とは言え、家族が多過ぎないか?)
太政大臣の邸には今は亡き加古井の中納言の遺した子がもっとたくさんいます。
「ううう……」
中納言に負けているので項垂れる左京です。
「違う!」
ボケをかました地の文に更に切れる左京です。




