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狙われた渚
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
由里達が焦る中、渚は何も感じていないのか、
「どうしたの、皆? 何を慌ててるの?」
キョトンとして尋ねました。
『中宮様、どうか我らと共に天へとお昇りください』
ひねくれ者の魂が言いました。すると渚は、
「いいよ。どこへ行くの? でも、皇子が泣くから、夕方には戻るけど、構わない?」
とんでもない事を言いました。
『何ィッ!?』
あまりの発言に、ひねくれ者の魂も唖然としたようです。
「今よ!」
由里が麗華と雁之助さんに目配せしました。
「はい」
急を要するので、地の文のボケに反応しない蘆屋道珍です。
少しだけ寂しいと思う地の文です。
「臨兵闘者皆陣列前行!」
由里達が一斉に早九字を切り、護符を投げつけました。
『おのれ!』
しかし、ひねくれ者はすぐに我に返り、護符を撥ね除けました。