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大浄化の始まり
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
魔物の言い分を聞き、由里と麗華と蘆屋道珍は顔を見合わせました。
「如何致しますか、お師匠様?」
道珍が尋ねた時、
「ならば私が弔いましょう、義母上様」
帝が出て来て言いました。
「危のうございます」
由里と麗華が驚いて帝を庇うように立ちました。しかし、帝は、
「義母上様、私は曲がりなりにもこの国の最高位の神職です。ご案じなさいますな」
そう言われてしまうと、由里は何も言えません。
「そうなんですか」
せいぜい言えて、娘の樹里の口癖くらいです。
「私が其方達を弔いましょう。それで都が救われるのであれば」
帝は祝詞を唱え始めました。
「うごなわれるみこたち、おおきみたち、まえつぎみたち、もものつかさびとたち、もろもろきこしめせとのる」
それは六月の晦の大祓の祝詞でした。