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魔物の正体
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
由里達の護符のお陰で、魔物の進行が止まりました。
『ぐぬぬ……』
魔物が呻き声をあげました。由里はスッと護符を構えて、
「正体を明かしなさい! 何者です!?」
いつになく鋭い目で尋ねました。ビビる地の文です。決して大木ではありません。
『我らは魔物にあらず。 遠き昔、唐を目指し、命を落としし者なり』
魔物が応じました。
「○ロ助?」
由里がボケました。
『違う!』
魔物は切れました。マニアックなので一部の人にしかわからないと思う地の文です。
「遣唐使として海を渡った方々の中で、唐に辿り着けなかった方々なのでしょう」
芦屋雁之助さんが言いました。
「その芦屋じゃねえよ!」
定期的にボケる地の文に切れる蘆屋道珍です。
「ならば何故、お上に災いをなそうとするの?」
由里が尋ねると、
「帝が弔ってくれぬからだ」
魔物は言いました。