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護、持て囃される
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
見目麗しい護は、たちまち宮仕えしている女達の評判になりました。
父親ではなく、母親に似てよかったと思う地の文です。
「うるせえ!」
左大臣のくせに全くと言っていい程威厳がない左京が切れました。
「ううう……」
威厳のなさは自覚しているようで、地の文に反論できない左京です。
「そうなんですか」
今日は樹里と瑠里が左京の仕事ぶりを監視しに来たのです。
「違う!」
捏造する地の文に左京は血の涙を浮かべて抗議しました。
息子である護が世話になっている方々への挨拶を兼ねて参内した樹里母子です。
「兄上様はどちらですか?」
瑠里が左京に尋ねました。左京はギクッとして、
「護は今、他の者達と、全国から集められた品々の検品をしている最中だから、会えぬぞ」
瑠里はツンとして、
「父上は兄上様に誠に冷たいのですね」
そう言うと、左京の部屋を出て行ってしまいました。