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護、馨に仕える
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
左京と美子の間に生まれた護は、その出生の秘密を知ってしまい、樹里の邸を出る事にしました。
左京は反対しましたが、樹里が賛成したので、あっさり許されました。
邸での順位がよくわかった地の文です。
「ううう……」
自分より下には元猫又の吏津玖しかいなかった左京です。
「僕は最下位かにゃん……」
吏津玖も衝撃を受けました。
(侍女より下なのか……)
左大臣の面目丸潰れの左京です。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。
護が向かったのは、実の母親である美子の再婚相手の馨の邸でした。
但し、美子にも馨にも護が真実を知っている事を内緒にしています。
決して親子の名乗りはしない約束で許されたのです。
(義母上様の恩は生涯忘れたりはしないが、実の母上に早くお会いしたい)
護は昂る気持ちを押さえ切れずにいました。