76/1080
男達の宴
御徒町の樹里は都に並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
猫又騒動からしばらく経ったある梅雨の朝。
濡れそぼる木々を部屋から眺める樹里です。
「姫様、朝餉の支度が整いましてございます」
侍女のはるなが言いました。樹里は頷きました。
「樹里様?」
立ち上がらない樹里を妙に思って近づくと、樹里は居眠りをしていました。
(またかよ)
寝てばかりいる樹里にはるなは舌打ちしました。早速後で告げ口しようと思う地の文です。
「やめてよ!」
はるなは地の文に抗議しました。
「そうなんですか」
樹里が寝言を言いました。
樹里が転寝をしている頃、貧乏貴族の左京は五人衆に誘われて宴に加わっていました。
「左京殿はもう試されたのか、樹里様を?」
下卑た顔で宮川の少将が尋ねます。
「何をですか?」
左京は首を傾げて尋ね返しました。
「私に言わせるのか、それを?」
宮川の少将は嫌らしい顔になります。
左京はゾッとしました。




