62/1080
道草、蓬莱の玉の枝を作る
御徒町の樹里は都で一番の美人です。
樹里を巡って巻き起ころうとしている陰謀があります。
「樹里様、御所にいらしては危うき事となります。お邸に戻りましょう」
侍女のはるなが言いました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じます。
「左京様がいらっしゃれば、大事ありませんよ」
樹里にそう言われて貧乏貴族の左京は気絶しそうです。
「ああ、其方は確か……」
左大臣が左京の顔を見て言いかけると、
「では、失礼致します」
樹里ははるなの先導で左京と共に立ち去ってしまいました。
「あの男は確か……」
何かを思い出した左大臣です。
その頃、関白の藤原道草は自分の邸に戻っていました。
(澄子を我が正室にし、樹里を側室にし、左大臣を殺せば、もはや朝廷は我が物)
道草はニヤリとします。
(あの姫様は俺に蓬莱の玉の枝は手に入れられないと思っているようだが、甘いぞ)
道草は煌びやかな枝を手にしました。