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左京、樹里と話をする
御徒町の樹里は御所一の美女です。ご先祖様はかの名高き光源氏の君です。
樹里は左京の君を邸に運ばせました。
樹里は左京が毎日通って来ているのを知っていました。
「貴方は私に何もおっしゃらずにお帰りになるので、嫌われたのかと思いました」
血塗れの衣を着替えさせてもらった左京は樹里にそう言われて仰天しました。
「貴女を嫌う者など都には一人もおりません」
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。また鼻血を噴きそうになり、堪える左京です。
前世と運命が変わっていないと思う地の文です。
「前世の話をするな!」
左京は地の文に切れました。
「では、貴方も私の事をお嫌いではないのですね?」
樹里が小首を傾げて尋ねます。それをまずい事に直視してしまった左京は鼻血を止めたのですが、耳から出てしまいました。
「貴女の事は恋焦がれておりました」
それだけ言って左京は気絶してしまいました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。