御徒町樹里の源氏物語（四百文字小説）

桐壺

左京、感極まる

　御徒町の樹里は都で一番の美人で、帝のお姉さんです。

　樹里を案じた帝が同居を勧めましたが、左京は樹里との生活を望んだので、帝が大きなお心をお示しになりました。

「姉上の望まれるお暮らしをなさいませ」

　帝はそう告げるとその場を去りました。

「ありがとう存じまする」

　左京は土下座をしました。

「そうなんですか」

　それでも樹里は笑顔全開です。

「御上（おかみ）もお認めくださりました。姫、我が妻におなりくだされ」

　左京は思い切って言いました。

「何ですって！？」

　豚と河童と聖獣が叫びました。

「違うわよ！」

　亜梨沙姫と蘭姫と美子（よしこ）姫が前世と混同している地の文に切れました。

（また実は夫がいるとかいうオチじゃないよね？）

　前世の嫌な記憶が甦る左京です。

「待たれよ」

　一同は声のする方を見ました。

「樹里姫様は我が側室におなりくだされ」

　声の主は藤原（ふじわらの）道草（みちくさ）でした。

「そうなんですか」

　樹里は笑顔全開で応じました。