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左大臣と関白
御徒町の樹里は都で一番の美人です。
そのため、権力者の謀略に巻き込まれようとしています。
「五反田殿」
宮中の廊下で関白の藤原道草が五反田の左大臣に声をかけました。
「これは関白様」
年は下でも位は上という立場の道草に左大臣は頭を下げました。
「奥方のご容態は如何ですかな?」
道草は恰も心配そうに尋ねます。
「只今臥せっております。聞けば、薬師を集めてくださったとか」
左大臣は息子の馨から聞いた話をしました。
「今は貴方の奥方ですが、かつては我が許嫁でもあったお方を案ずるのは当然です」
道草の言葉に左大臣の顔が強張ります。
(まだそれを根に持っておるのか?)
「では」
道草は不敵な笑みを浮かべて立ち去りました。
左大臣はその後ろ姿を睨んでいましたが、踵を返して歩き出しました。
「もうすぐ追い出してやるよ」
道草はチラリと振り返って呟きました。
二人は因縁深いと推測する地の文です。




