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樹里、注目を集める
御徒町の樹里は都で並ぶ者がいない美人です。
そのため、宮中の陰謀に巻き込まれかけていました。
「では、お尋ね致します」
詮議役の箕輪の大納言が許嫁のまゆ子姫から見える右半分の顔をきりりとし、左半分でにやけながら言いました。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。
(やっぱりお美しいわ)
帝のお妃候補に名を連ねる美子姫は素直にそう思いました。
(もみじの方がふくよかで美人だわ)
大村の御息所がニヤリとしました。
周囲の人達はそのおぞましさに身震いしました。
亜梨沙姫と蘭姫は初めて樹里を間近で見て唖然としています。
(勝てない)
今頃気づいた愚かな人達です。
「やかましい!」
鋭い指摘をした地の文にピッタリ合った呼吸で突っ込むじゃじゃ馬です。
(姫の侍女も可愛いなあ)
五人衆の一人の宮川の少将ははるなにデレッとしています。
危ない人のようです。
(寒気がする)
はるなはその視線を感じて震えました。




