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嫉妬渦巻く宮中
御徒町の樹里は都で一番の美人です。
度崙戸という盗賊が樹里の邸に出没した件で、樹里は御所に呼ばれました。
「キンキンに会えますか?」
牛車の中で樹里が尋ねました。
「その出没じゃないです」
侍女のはるなはわかりにくい樹里のボケに項垂れました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
(正体がばれたらどうしよう?)
夜遊び女だと知られるのを危惧するはるなです。
「違うわよ!」
はるなは見当違いの憶測をする地の文に切れました。
樹里を呼び出したのは五人衆の一人の箕輪の大納言です。
大納言にはまゆ子姫という許嫁がいます。
(詮議にかこつけて、樹里姫を無理矢理……)
いけない事を企んでいました。
「私も立ち会います」
まゆ子姫が来ました。大納言の顔が青汁より蒼くなります。
更に美子姫、大村の御息所、亜梨沙姫、蘭姫も現れました。
嫉妬の渦に飲み込まれそうな地の文です。