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今源氏
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
篠原の大将はフッと笑い、篝と鑑に近づきました。
「久しいな、お二方」
その言葉に篝がハッとします。
「其方は……」
何故か頬を朱に染める篝です。
「如何なさいました、姉上?」
鑑が尋ねました。すると大将はスッと鑑を抱き寄せ、
「色男の顔を忘れたのか?」
鑑は大将の顔を間近で見て顔を赤らめました。
「もしや、今源氏様?」
鑑は卒倒しそうです。大将は鑑の顎を右手で掴み、左手で赤子を抱き取りました。
「そう呼ばれているようだな。其方の麗しい唇をもう一度味わいたい」
いきなり吸い付きました。鑑はビクンとしましたが、何もできません。
篝も唖然として見ているだけです。
「はああ……」
腰が抜けた鑑を床に下ろし、次に篝を抱き寄せる大将です。
「何故このような事を?」
篝は目を背けて、
「大姉様の敵討ちです」
大将は眉をひそめました。