265/1080
謀略の始まり
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
美子姫の子供を樹里が養子に迎えてから一か月が過ぎました。
樹里は娘の瑠里と養子の護に授乳しています。
ダメな夫の左京はそれを見て鼻血を垂らしていました。
もうこのまま死んでしまった方がいいと思う地の文です。
「うるせえ!」
左京は思った事をつい口にしてしまう地の文に切れました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で授乳を終了しました。
その頃、星一族の篝と鑑は弘徽殿の女御の邸の一室で話していました。
「決行は今宵。月もなく丁度好い」
篝がニヤリとします。鑑もフッと笑い、
「いよいよ始まるのね、姉上」
「ああ。我らが日の本を統べるのだ」
二人の忍びは声を押し殺して笑いました。
月一族も樹里の邸の一室に集まっていました。
「恐らく今宵、彼奴らが仕掛けて来る」
葵が言いました。




