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魔女の諍い
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
樹里達の牛車が進んでいくと、また別の大路から大きな牛車が現れました。
「弘徽殿の女御の車なぞ、妾のものに比ぶれば大した事はなし」
大村の御息所の牛車でした。
「やっほー、叔母様!」
確執を知らない自由な渚が手を振りますが、御息所は無視しました。
「母上、帝の妃である渚姉様を無視するのは如何なものかと存じます」
娘のもみじが窘めました。御息所は、
「妾は気分が悪いとでもしておけ」
とりつく島もありません。
(おのれ、一度地に落ちた一族が!)
女御は前に出ようとする御息所の牛車の行く手を阻ませます。
(何とおぞましい……)
隣にいる美子姫は悲しんでいました。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。
(このままでは星一族の思う壺だ)
御息所の大人げなさを侍女である美咲は嘆きました。




