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それぞれの思惑
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
帝主催の紅葉狩りの話が樹里達の邸にも届きました。
「皆々様でお越しくださいませ」
使いの者が届けた文は、帝と妃の渚の連名でした。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
「はい……」
憂鬱な顔で応じる左京です。
「美子姫様もいらっしゃるそうです」
侍女の茜が告げました。顔を引きつらせる左京です。
(美子姫様には合わせる顔がない)
誰に対しても合わせる顔がないと思う地の文です。
左京は反論できずに項垂れました。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。
話を聞きつけた牛丼屋さんは屋台を出そうと思いました。
「違う!」
時代考証無視の地の文に平特盛が切れました。
(由里様もいらっしゃるはず)
色に狂った特盛です。
「楽しみぞえ」
大村の御息所も呼ばれています。
( ややこしい事にならねばよいが)
娘のもみじは思いました。




