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加古井の中納言の暗躍
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
加古井の中納言は中将を自分の部屋に誘いました。
「加藤殿、左京は下賎な身分にも関わらず、樹里様を娶り、帝と義理の兄弟になり申した」
中納言は真剣な表情で言いました。
「彼奴を宮中、いや、この都から追い出さば、中将殿の溜飲も下がるというもの」
中納言は大村の御息所も驚く程の悪い顔をしました。
「全くです」
中将は中納言の術中です。
箕輪の大納言は養女に迎えたまどかに歌を教えていました。
「さすが我が妹よ。筋が良いな」
そしてまどかを後ろから抱きしめる変態です。
「ありがとうございまする、兄様」
まどかは嬉しそうに応じました。
「大納言様、いらっしゃいますか?」
加古井の中納言が廊下から声をかけました。
「何だ? 私は忙しいのだが」
まどかとのひと時を邪魔されたので大納言はお冠です。
「お力をお借りしたいのですが」
中納言はニヤリとして言いました。