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吏津玖の意地
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
左京は目の前に現れた髪長姫に硬直しています。
(こ、殺される)
早く殺されればいいのにと思う地の文です。
「ふざけるな!」
左京は血も涙もない発言の地の文に切れました。
「初めてお見かけした時からずっとお慕いしておりました。私とお契りくださいませ」
髪長姫はその豊かな黒髪を分け、顔を見せました。
「おお!」
左京は驚愕しました。妖怪だと思っていた相手が天女のような美人だったからです。
「加藤の中将とは義理の兄妹ですか?」
思わず訊いてしまう左京です。
(うまくいったにゃん)
吏津玖はそれを見てほくそ笑みます。
「命拾いしたな」
いきなり星一族の女が背後で言ったので、
「にゃん」
吏津玖は漏らしました。
「猫さん、ここでしたか」
笑顔全開で樹里が現れました。星一族の女は姿を消しました。
「樹里様!」
侍女の茜が気配を感じて樹里を庇うように立ちました。




