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吏津玖の申し出
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
元猫又の吏津玖は、加藤の中将の妹である髪長姫の前に姿を現しました。
(それにしても、凄い鼻にゃん……)
魔法使いのお婆さんも吃驚する程姫の鼻先は長く垂れています。
(他の造形は悪くないのに、これが全て台無しにしてるにゃん)
中将の妹にしては上出来だと思う吏津玖です。
「あの、どちらさまですか?」
姫が首を傾げて尋ねました。すると吏津玖はフッと笑って、
「僕は呪術師の吏津玖にゃん。君のその鼻を美しい形に変えてあげるにゃんよ」
「え? 真でございますか?」
姫が吏津玖の両肩をグイと掴みました。ほとんど肩幅がない吏津玖は首を絞められたようになりました。
「く、苦しいにゃん……」
危うく死んでしまうところでした。死んでしまえばよかったのにと思う地の文です。
「うるさいにゃん!」
吏津玖はコソッと酷い事を言った地の文に切れました。




