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相次ぐ出産
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
更に月日は流れ、年が変わりました。
年明けに亜梨沙が出産しました。男の子です。
ずっと塞ぎ込んでいた加藤の中将でしたが、それには大喜びしました。
「でかした、亜梨沙!」
中将は柄にもなく涙を見せました。罪人の目にも涙です。
「だから罪人じゃねえよ!」
中将は地の文に突っ込みました。
「ありがとうございます」
じゃじゃ馬だった亜梨沙もすっかり母親の顔です。
それからしばらくして、美子姫が出産しました。
生まれたのが男の子だったので、姉である弘徽殿の女御は頭を抱えました。
(何という事だ……)
父親は憎みても余りある左京ですが、男の子となれば放置する訳にはいきません。
「私にお任せください」
星一族の女が囁きました。女御はぞっとしましたが、
「頼んだぞ」
目を細めて告げました。
更にしばらくして、樹里も出産しました。




