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弘徽殿の女御と星一族
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
弘徽殿の女御は帝が渚を妃に選んだのを知り、激怒しました。
「何たる事か! あのような頭の足りぬ女子を妃とは、お上は血迷われたのか」
そうは言っても、頼みの綱であった妹の美子は事もあろうに樹里の夫の左京の子を身籠っています。
(何としてもあの一族はこの都から追い出してやろうぞ!)
鬼の形相で決意する女御です。それを見てチビりそうになった地の文です。
そこへ左京を勾引した女が現れました。
「何者ぞ?」
いきなり姿を見せた女に女御はギョッとしました。
「私は星一族の者です。貴女の無念を晴らすためにお力をお貸し致します」
女は正座し、頭を下げました。
「星一族とな?」
女御は眉をひそめました。
「話を聞こう。近う参れ」
女御は言いました。
いよいよ左京の命日が近づいたと思う地の文です。