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稚児趣味集合
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
加古井の中納言は左大臣に挨拶をすませ、麻耶姫との婚儀を形式だけすませると、出仕するふりをして、従者の案内で牛車で町に出ました。
「どこだ?」
中納言は目の色を変えて尋ねます。
「この大路を進んで右に折れた通りにいらっしゃいます」
従者はあまりに顔が近い中納言に引いています。
「そうか」
その時、中納言は歩いている宮川の少将を見かけました。
(彼奴も知ってしまったのか)
同じ稚児趣味として強敵です。
「少将殿」
中納言は宮川の少将に声をかけました。
「これはこれは中納言様」
少将は同じ趣味の中納言に警戒しながら言いました。
(油断がならぬ。此奴も樹里様の妹君が目当てであろう)
互いにそう思う変態です。
「うるさい!」
正直な地の文に二人は切れました。
「失礼致す」
その二人を嘲笑うかのように箕輪の大納言が馬で通り過ぎました。