207/1080
巡り会い
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
翌朝、左京は気分転換を兼ねて、樹里と共に牛車で町に出ました。
「あれ?」
左京は樹里そっくりな女の子が歩いているのを見かけ、
(誰を見ても樹里様に見えてしまう……)
完全に危ない存在だと思う地の文です。
「う・る・さ・い・よ」
左京は某クリステルの真似をして切れました。
「止めてください」
樹里が不意に言いました。
「如何なさいましたか、姫?」
侍女のはるなが尋ねました。
「妹がいました」
樹里は笑顔全開で応じてから、
「真里」
先程左京が見かけた女の子を呼び止めました。
「姉上、久方ぶりです」
真里と呼ばれた女の子が言いました。
唖然とする左京とはるなです。
(そっくり過ぎ……)
弘徽殿の女御は左京を陥れる策を配下の者達に命じて考案させていました。
(目障りな御徒町一族も一緒に追放してやる)
女御はニヤリとしました。




