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渚、もみじと話す
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
渚は大村の御息所が病に伏しているともみじから聞き、御息所を見舞いました。
「叔母様、お加減は如何?」
いつになく神妙な顔で尋ねる渚です。
(何を企んでおるのだ、渚?)
そう思った御息所は、
「お上に目通り叶わなかった故、気落ちしただけじゃ。大事ない」
そして激しく咳き込む臭い芝居をしました。
(やはり悪口が聞こえるぞえ)
御息所は天井を見渡しました。
「お上って誰?」
渚がもみじに小声で尋ねました。もみじは項垂れて、
「帝ですよ、渚お姉様」
渚は目を見開きました。
「へえ、帝君て、お上っていう名前なんだ」
「違います!」
もみじはイラッとして言いました。すると渚はニヘラッとして、
「そうそう、私ね、帝君の奥さんになるんだよ」
もみじが仰天していると御息所が飛び起きて渚に詰め寄ります。
「それは真か?」
意識が飛びそうな程衝撃を受けている御息所です。