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左京、亜梨沙に迫られる
御徒町の樹里は都で一番の美人です。
その樹里に何故か好意を寄せられた貧乏貴族の左京は、幼馴染の亜梨沙の部屋にいました。
(早く逃げないと)
亜梨沙が部屋を出た隙に逃亡を計ろうとする左京です。
「あら、どちらに行かれるのですか、左京様?」
背後に亜梨沙がいきなり現れたので、左京は少しちびりました。
「厠にね」
顔を引きつらせる左京です。
「この時代にはそのようなものはありませぬ。こちらでおすませください」
亜梨沙はドヤ顔で樋箱を渡しました。
現在で言うおまるです。
「はい」
脱出に失敗した左京は項垂れました。
「そんな事より」
亜梨沙は篠箱を放り出して左京ににじり寄ります。
「楽しき事を致しましょう」
色目を使う亜梨沙に吐き気を催す左京です。
(誰か助けて)
でも誰も助けには来ません。
御所から遠く離れたあばら家に二人の女性がいました。
「今宵取りかかるよ」
「はい、首領」
そう応じたのは縫兎登でした。