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はるな、内緒話をする
御徒町の樹里は都一番の美人です。
しかも、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄でもあります。
侍女のはるなが邸の外で別の邸の侍女達と話をしています。
「あんな貧乏貴族のどこがいいのか不思議ですわ」
はるなは左京の悪口を触れ回っています。
「そうなんですか」
いつの間にか背後に立っていた樹里に魂が飛んでしまいそうになるはるなです。
「姫様、お外に出られては危のうございますよ」
はるなは嫌な汗を掻きながら誤魔化そうとします。
「失礼致します」
はるなと話していた侍女は樹里にお辞儀をして立ち去りました。
(奇弥美は粗忽なのが困るわ)
彼女ははるなの秘密を知っているようです。
はるなは樹里を追い立てるようにして邸に戻りました。
(縫兎登さんに叱られちゃうわ)
相手の侍女は縫兎登という名前のようです。早速樹里に教えましょう。
「そういう反則はダメよ!」
掟破りの方法を使おうとする地の文にはるなは涙目で抗議しました。