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広がる怪談
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
まゆ子姫は箕輪の大納言の身を案じ、使用人達に探させました。
彼女は自分が生霊となって大納言を失神させた事を知りません。
大納言は誰もいない邸の中で気を失っているのを見つけられました。
でも元猫又の吏津玖は気づかれませんでした。
「にゃん?」
人の気配で目を覚ました吏津玖ですが、
「お恨み申し上げまする」
今まで食ってきた人の怨念が次々に現れ、また失禁しました。
大納言は何を言っても怯えるばかりです。
「どうなさいました?」
まゆ子が大納言を宥めると、
「ひい!」
まゆ子を見て失神する大納言です。
「慶一郎様」
そんなやり取りが数度繰り返されました。
夜道を項垂れて歩いていた加藤の中将は走って来た梓とぶつかりました。
「ひい!」
梓は中将の顔を見て仰天し、駆け出しました。
「ひい!」
中将は梓が半裸だったので物の怪と思い、腰を抜かしました。