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見え始めた奈落
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
忍びの葵、美咲、茜が樹里の母の由里の家に来ていました。
「特ちゃんが?」
由里は幼馴染の平特盛が良からぬ事を企んでいる事を告げられました。
「恐らく、樹里様の旦那様はすでに術中と思われます」
葵が言いました。すると由里は、
「あまり気にしなくていいよ、葵ちゃん」
自由気ままな言葉遣いに唖然とする葵達です。
「でも、樹里達をしっかり守ってね」
急に真顔で言う由里についていけなくなりそうな葵達です。
「畏まりました」
三人はスッと消えました。
「大事ないのですか、母上?」
樹里の姉の璃里が心配そうに尋ねました。
「大丈夫よ、璃里。この話はそこまで深刻なものではないから」
その通りだと思う地の文です。
左京は真っ白に燃え尽きそうな状態で寝ていました。
「左京様、ありがとうございまする」
樹里が耳元で言うと、左京は鼻血を噴き出しました。