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左京、樹里に土下座する
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
お騒がせ的存在の渚が帰り、左京はホッとしました。
そして樹里を見ます。直視したのが久しぶりだったので危うく鼻血を噴きそうになる左京です。
「左京様、如何なさいましたか?」
樹里が小首を傾げて尋ねたので、遂に右の鼻から血が垂れてしまいました。
「樹里様にお詫びしなければならない事がございます」
左京は正座して言いました。樹里も正座しました。
「何がどういう事なのか未だにわかりませぬが、あった事は確かです。美子姫様と契ってしまいました」
左京は額を床に擦り付けて言いました。
「そうなんですか」
樹里の声が聞こえました。
「お許しくださいとは申しませぬ。ですが、お詫びだけはさせてください」
顔を上げて樹里が泣いているのに気づき、心臓が止まりそうになる左京です。
(何という事をしてしまったのだ)
左京はどうしたらいいのかわからなくなりました。