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月対星
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
謎の女に連れ去られた左京は同じく連れ去られた美子姫と契ってしまいました。
「嬉しゅうございます、左京様」
事の後、美子と左京は寄り添って寝ていました。
(何故こんな事に?)
左京は操られているのですが、状況は把握していました。
そして美子の恐ろしい姉である弘徽殿の女御の事を思い出しました。
(妃となるべき方と契ってしまった私はどうなるのだ?)
左京は震えそうです。それに反して美子は、
(ああ、左京様のお子が成せるやも知れぬ)
喜んでいました。大変な事が起こると思う地の文です。
左京の行方を探している葵達の前に左京を連れ去った女が手下の女二人を連れて現れました。
「やはりお前達か?」
葵が睨みを利かせて言いました。すると左京を連れ去った女がニヤリとし、
「さて、ここで積年の恨みを晴らすぞ」
そう言って身構えました。