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もう一人のじゃじゃ馬姫
御徒町の樹里は都に並ぶ者のない美人です。
その上、かの光源氏の君の血を引く高貴な家系です。
「左京様をお呼びになった方は御所では力のある方です」
心配してみせる夜遊び女です。
「それは別の話でしょ!」
本編と混同する地の文に切れるはるなです。
「お相撲さんですか?」
樹里が尋ねました。
「その力じゃありません」
はるなは項垂れました。
「そうなんですか」
樹里はそれでも笑顔全開です。
左京が五人衆に呼びつけられた話は御所中に広まっていました。
「それで、左京様は今いずこに?」
人を殺せそうなくらい鋭い目つきの美人が侍女に尋ねました。
「亜梨沙様のお部屋に」
侍女はその目の強烈さに少しだけ漏らしながら答えました。
「何ですって!?」
侍女はその剣幕に全部漏らしました。
「亜梨沙め、幼馴染なのをよい事に左京様を独り占めするつもりか?」
その女性の名は蘭姫。昔河童だった人です。
「前世の話はするな!」
蘭姫は容赦のない地の文に切れました。