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馨失脚?
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
樹里は左京と共に牛車に揺られ、邸に向かっていました。
「しばらくはお邸で過ごしましょう」
まだ気を失ったままの母親の由里に膝枕をして樹里が言いました。
「はい」
左京はあまりにそっくりな親子に驚愕しながら応じました。
馨は父である左大臣に呼び出されていました。
「隠し事をしているな?」
いつもは穏やかな左大臣が目を吊り上げて言いました。震え上がる馨です。
「そう恐るるな、馨。咎め立てしたいのではない」
左大臣は真顔のままで言います。馨は顔を引きつらせました。
「女の背後に特盛の影があるようだ。お前はしばらく政から離れよ」
「はは」
馨は父の温情に感動しました。
「特盛公は何をお考えなのですか?」
馨が声をひそめて尋ねました。左大臣は首を横に振り、
「わからぬ。後はその者らに任せよ」
馨の背後に忍びの葵と美咲が跪いていました。




