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左京、策にはまる
御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
いつになく悲しそうな顔の樹里を見て、侍女のはるなは意を決しました。
「旦那様」
はるなは出かけようとする左京を呼び止めました。
「何だ?」
左京は初めて出会った時、ボコボコにされたのを思い出してビクッとします。
「お話があります」
よく見ると可愛いはるなのその言葉に妙な興奮を覚える異常者です。
「異常者じゃねえよ!」
左京は誹謗中傷をする地の文に切れました。
(もしや、こいつも私の子が欲しいのか?)
やはり様子がおかしいです。
「こちらで話そうか」
左京ははるなを自分の部屋に引き込みました。
「何をなさいますか!?」
はるなは左京の異変に気づき、その手を振り払いました。
「旦那様は薬を嗅がされていらっしゃいますね?」
はるなは目が虚ろな左京に言いました。
「え?」
左京はキョトンとしました。
「今、その縛りをお解き致します」
はるなは丸薬を出しました。