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五人衆の思惑
御徒町の樹里は都で並ぶ者がないほどの美人です。
その樹里に好意を持たれた貧乏貴族の左京は、御所の有力貴族である五人衆と呼ばれる高貴な方々に呼ばれました。
(気が遠くなりそうだ)
普段は何人もの人を介してでなければ話ができない方々ですから、左京は緊張しています。
「其方に尋ねたい事がある」
左大臣の子息である馨の君が言いました。決してもずくや怪盗ではありません。
「何やら面妖な……。どこぞから声が聞こえる」
馨の君は天井を見回しました。
(何かの病であろうか?)
左京は馨の君を哀れみました。
「御徒町の姫様とはどういう関わりであるのか?」
その言葉に左京はビクッとしました。
(もしや私に樹里姫には近づくなとおっしゃるのか?)
ストーリー展開を先読みする作者泣かせの左京です。
「関わりなどと、それほどのものではありませぬ。只、姫様のお邸の前で倒れてしまい、看病をされただけでございます」
左京は床に額を擦りつけて言いました。