129/1080
平特盛の陰謀
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
左京は夕餉を食べると、
「休みます」
さっさと寝てしまいます。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。
「樹里様、旦那様は女子に会っていたのですよ、きっと」
侍女のはるなが言いました。
「それは仕方ない事です。左京様はおもてになりますから」
樹里は微笑んで言いました。はるなは涙ぐんでしまいます。
(何と健気な……)
「それなら、樹里様は僕と浮気をすればおあいこにゃん」
懲りない元猫又の吏津玖が言いました。そして樹里に襲いかかろうとしますが、
「ほらあ、こっちこっち」
はるなに猫じゃらしを見せられ、ついそちらに飛びついてしまいました。
(悲しい猫の習性にゃん)
吏津玖は心の中で泣きました。
御所の近くの平特盛の邸です。
(馨と加藤の中将の方は計画通りだ)
彼はニヤリとしました。嫌な予感がする地の文です。