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加藤の中将、思わぬ再会をする
御徒町の樹里は都で一番の美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
加藤の中将は亜梨沙と蘭に言われて、樹里の部屋へと向かいました。
亜梨沙は先回りし、左京を外に呼び出していました。
「何の用だ?」
樹里から離れられてホッとしているくせに亜梨沙には素っ気ないバカ貧乏左京です。
「只の悪口じゃねえか!」
左京は盛り過ぎの地の文に切れました。
「樹里様に鼻で笑われないように私で稽古致しません事?」
艶っぽい目で左京を見る亜梨沙です。左京はギクッとしました。
加藤の中将は、樹里の部屋の前まで来たのに二の足を踏んでいます。
(ここまで来て怖くなって来た)
左京は亜梨沙が連れ出したのを確認したので、ビビる罪人です。
「だから罪人じゃねえよ!」
罪人も逃げ出す恐ろしい顔で切れる加藤の中将です。その時でした。
「え?」
中将は廊下の先から歩いて来る女性に気づきました。
(もしやあの人は……)
加藤の中将がその身体に溺れた女性でした。