御徒町樹里の源氏物語（四百文字小説）

帚木

美子姫の願い

　御徒町の樹里は都で並ぶ者のない美人で、光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。

　樹里の部屋を訪れた美子（よしこ）姫は左京を見つめました。

（綺麗な方だ）

　左京はそんな視線に顔を火照らせます。

「妾（わらわ）の願い、お聞き届けくださいますか、左京様？」

　美子姫は更に左京に顔を近づけました。

「そうなんですか」

　それでも樹里は笑顔全開です。

　美子姫は、

「妾に左京様のお子を産ませていただきたいのです」

　直球発言に加○コミッショナーも驚愕すると思う地の文です。

「ええ？」

　どういう意味なのか左京にもわかったようです。

「そうなんですか」

　樹里は相変わらず笑顔全開です。

「ではまた」

　美子姫は妖艶な笑みを左京に向けてから部屋を出て行きました。

（確かに美子様は美しい方だが、姉上が……）

　美子姫の姉は弘徽殿（こきでん）の女御（にょうご）です。

　例えるなら、宮中のナベ○ネのようなものです。

（そんな恐ろしい事はできぬ）

　左京は身震いしました。