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樹里の涙の意味
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄です。
樹里は左京が寝てしまうと、そっと膝枕を外し、厚手の衣をかけました。
後は顔に白い布をかけるだけだと思う地の文です。
「ふざけるな!」
眠りながらも地の文に切れるという高等技術を見せる左京です。
樹里は目を潤ませたままでその場を去りました。
「あんたの強運でも左京ちゃんの宿命は変えられなかったね」
縁側の端で母親の由里が待っていました。
「はい」
樹里は両の目から涙を零して応じました。
「左京ちゃんはあんたと先帝を助けた時、その宿命を背負ってしまったんだよ。あんたのせいじゃないよ」
いつになく深刻な顔で言う由里です。地の文はボケられませんでした。
「相手がもう死んでしまった奴では、さすがの私にもどうする事もできないよ」
悔しそうに呟く由里です。一体誰の事でしょう?
「もう少し早く気づいていたら、お師匠様にお助けいただけたんだけどね」
樹里と由里は抱き合って泣きました。




