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司、焦る
御徒町一族は光源氏の君の血を引く由緒正しき家柄で、美人揃いです。
護の後ろに立っていたのは、老人でした。
「久しいですな、司様」
老人は微笑んで言いました。司は顔を引きつらせて笑い、
「お久しぶりです、お師匠様」
尋常ではない汗を掻いている司です。
「司様、お教えしたはずですぞ、人を呪わば、我が身に必ずやその報いが還ると」
老人が眉間にしわを寄せ、厳しい表情で告げると、司はフッと笑い、
「元より承知の上。亡き父の仇が討てれば、私はこの世に未練などありませぬ」
それを聞いて護は目を見張りました。
(もはや打つ手立てなしとおばば様がおっしゃっていた通りなのか?)
おばば様とは樹里の母親の由里の事です。
「そんな解説すると許さないよ!」
どこかで聞きつけた由里が地の文を脅かしました。
「これを聞いてもか、司様?」
老人が人形に息を吹きかけると、それは亡き後黒河院になりました。
「父上」
ギクッとする司です。




